VOA村の冒険

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VOAと共形ネット① イントロ

 

こんにちは。みしぇるです。

今日は数理物理の話をしたいと思います。

 

「場の量子論」ってありますよね。

場に交換関係とか反交換関係を課したりするアレです。

特殊相対論と量子力学が両立する理論で、現在の物理はこの理論に拠っています。

 

さて、場の量子論を学んだことのある人は、その取扱いにいろいろな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。たとえば、「場ってそもそも何?」「真空ケットって何者? そもそも存在するの?」「どの言明が要請なの? どこまで要請すれば十分なの?」などなど。

物理では、この辺りに深入りしなくても実験結果を説明するのに十分な考察ができます。しかし、これらの枠組みを厳密に考えようとすると数学的に面白い構造が出てきます。

 

場の量子論を厳密にし公理化したものとして「Wightmanの公理」があります。詳しい内容はまた今度扱いますが、場というのはポアンカレ群の作用について共変な作用素値超関数だよとかspace-likeな場は(反)可換になってねというようなことを要請しています。この公理からCPT定理やスピン統計性定理が従うので、なんだか良さそうです。

ここでWightmanの公理を代数的に取り扱うことを考えます*1。そのような対象は2つ知られています。1つは「作用素環のネット」、もう1つは「頂点作用素代数(VOA, vertex operator algebra)」*2です。作用素環のネットについてはある条件をみたす作用素環の族(共形ネット)を考え、VOAについては特殊な元(真空元、共形元)を持つ代数を考えます。

 

ここで思うことが一つ。

作用素環のネットとVOAは一見違う対象だけど、同じ物理を記述しているのだから、何かしらの対応はあるのでは?」

まあこれは以前ある先生が仰っていたことの受け売りなんですが。ともかくこの疑問に僕は非常に興奮しました。物理の理論から数学の定理が出てくるみたいな話が大好きなので。

そこで僕は調子に乗って

「よっしゃ! 大学院行って、作用素環とVOAを結び付けたるぞ!」

と意気込んでいたわけです。

なんですが……

 

[1503.01260] From vertex operator algebras to conformal nets and back

……2015年にすでに関係が示されていました。*3

 

がーんだな、となったわけです。いや、興味ある研究室の論文すらチェックしていない僕が悪いんだけどね。というかそもそもさっきの予想は2005年にされていたことだしね。10年もあれば進展するよね。

 

……というわけで大変いたたまれない気持ちになったので、ブログで紹介することにしました。次回以降、上の論文を理解することを目標としていろいろ紹介していければなあと思っています。僕自身全然理解が及んでいないので、このブログを通して理解できればなあと思っています。

 

それではみなさん、よいお年を。

*1:2017/02/20: 以前Wightmanの公理を数学的に扱う、というような書き方をしていましたが、Wightmanの公理じたい数学的に厳密なので訂正。

*2:余談ですがこのブログの名前のVOAはここからきています。「村の冒険」は宮本雅彦先生の「有限群村の冒険」をリスペクトしました。

*3:正確にはstrongly localなVOAについての結果だけど、一番有名なムーンシャイン加群をはじめ多くのVOAがstrongly localになるらしいので、ほとんど解決したようなもん。追記: 解決したは言い過ぎで、例えば作用素環の完全有理性とVOAのC_2-余有限性の対応などが未解決予想となっているようです。