VOA村の冒険

漫画、音楽、お絵かき、物理、数学とか

近況報告と研究室見学

お久しぶりです。B4って思ったより忙しいんですね。普通に授業の予習復習をしているだけで時間がなくなります。その影響でVOA関係の進捗が全然産めてません。また院試が近いこともあるので、VOAと共形ネットシリーズの記事は最悪半年後とかになるかもしれないです。いちおうconformal netを定義する内容の書きかけの記事があるので、それは投稿するかもしれませんが……。

さて、院試が近いので研究室を見学させてもらうことを始めました。現時点までに数学系の2研究室にお邪魔したので、その時伺った内容を備忘録として書いておくことにします。

まず最初に伺ったのは駒場のある先生のところ。(名前は書かないが僕がVOAと共形ネットシリーズを書き始めるキッカケとなった方。)質問を考えるために論文中で提示されたConjectureなどを調べて行った。しかし今思えばこれは蛇足だった。緊張していたのもあるが、細かい質問をしすぎて先生の大局的な考え方を聞けなかった。結局30分くらいでお暇してしまった。

しかし色々情報をいただくことはできた。まず以下の論文を勧められた。

[1611.01176] Geometric realization of algebraic conformal field theories

「既知の結果より弱い結果だが、自然なやり方である」らしい。時間ができたら読んでみようと思う。

Conformal netあるいはVOAの表現論で一番わかりたいのは何か?という質問をすると、テンソル積だと即答された。Conformal netに限らず表現論においてテンソル積は重要な概念であるが、conformal netあるいはVOAの表現のテンソル積はやたらと難しい。それを理解することがこれからの課題のようだ。また、調べていった未解決の予想については全て現時点でも未解決らしかった。自分で論文書けたりしないだろうか、と思った。数学はどれくらい勉強しているのかと質問されて、伊藤ルベーグと日合・柳の証明を追った程度である旨を話したら、準備として悪くないレベルだと言われた。作用素環の勉強をする際に読む本として以下のものを勧められた。

www.amazon.co.jp

物理学科から進学する人はいるのか尋ねると、やはり定期的にいるらしかった。過去には修士も物理で取ったがセミナーに参加して作用素環の研究もしていた人もいるらしかった。もしかしてこれ自分にとっての最適解でもあるのでは?と思った。というのも、単純に僕の数学力では院試が難しいのと、自分の意識として「物理から出る数学をやりたい」というのがあり、作用素環という対象との距離感は研究室外からお邪魔するくらいが適切なのではと思ったから。

最後に、研究者になりたいのなら今アカデミックは厳しい状況にあるのでよく考えるように、と言われた。一流の研究者がこう言っているのだから本当に厳しいのだろう。

次に伺ったのは筑波大学のある先生のところ。先生が今年退官される&来月から忙しくなるとのことで、今回お話をいただけたのは運が良かった。前回のように細かい質問が思い浮かばなかったが、僕が大雑把な質問をすると先生がそれを広げてくださる形になって、100分ほど居座った。こちらとしては非常に楽しかった。

先生の研究について伺うと、軌道理論など有限群にVOAを使うモチベーションでやっているとのことだった。過去のVOAの自己同型に関する研究について質問すると、もともとFrenkel-Lepowsky-Meurmanの本↓がひどいので書き直そうと始めたとのことだった。

Amazon.co.jp: Vertex Operator Algebras and the Monster, Volume 134 (Pure and Applied Mathematics): Igor Frenkel, James Lepowsky, Arne Meurman: 洋書

VOAの構造を調べると、VOAの自己同型じたいは色々条件をつければ大きさを調整できるが、そういうことではなくて内部構造だけからモンスターが出るのだということがわかり、そこで初めてVOAと有限群の繋がりを確信してその後の研究を続けたそうだ。その後先生は群論の観点からMoonshine VOAの新しい構成を与えている。あとでその論文を読みますと言うと印刷物を下さった。Annals of Mathematicsの論文で、提出してからacceptされるまで4年かかったらしい。

先生曰く、異なる2つの分野を深く理解している人はほとんどおらず、2分野の中間の領域では(もちろんどちらの分野からも評価されない可能性もあるが)積極的に論文を書けるということらしい。先生自身も有限群とVOAを深く理解しているほとんど唯一の方だ。また、次の結果を紹介された。

[1309.2671] Mathieu Moonshine and the Geometry of K3 Surfaces

このHohnという方が代数幾何VOAを理解しているほぼ唯一の存在らしい。有限群の文脈でK3曲面などの単語が出てきて驚いた。

先生からは学習のアドバイスも沢山いただいた。まず何かを学ぶ上で一番大事なのは良い先生に師事することだと言われた。良い先生とはどのような先生か、と尋ねると、第一に厳しいこと、第二に質問にちゃんと答える人であること、と言われた。1つめはまあいいだろう。2つめについては、本当にその分野が好きな人ならば興味をもって自分のところにやってくる存在を(たとえそれがどんな若造でも)無碍にはしないはずで、授業でもなんでも質問されるのを嫌がるはずはない、とのことだ。更に第三の要素として、科研費を取っている先生がベターと言われた。

また、研究をする上で大事なのは、自分がいちばんやりたい大きいことを心の奥底に持っておいて、そこに向かう長い道のりの中で小さい仕事もこなしていくことだと言われた。自分には物理の数学をやりたい、くらいの漠然とした気持ちしかない、と言うと、それで十分だと言われた。物理も数学も両方勉強しなさいと言われた。自分の研究にするには深い理解が必要、あることを深く理解するには本を一冊読むくらいではおそらく無理、加えて演習問題もちゃんとやったほうが良いと言われた。

最後に先生の著書にちゃっかりサインをもらってお暇した。

以上2回の研究室訪問でこれから院試までの行動計画が少し定まった。

・たぶん院は物理系に進む。物理系の院で数学も勉強する。

・これから院試までに学部レベルの物理・数学をなるべく深く理解する。演習問題を沢山とく。

・院試の出願までに研究室訪問を重ね、「良い先生」を見つける。

こんなところだろう。

というわけでこれからも研究室訪問で面白い本・論文などを勧められたらこのブログに書くかも。ただしあんまりプライベートな会話を晒すのもどうかと思うので具体的なお話とかは載せないと思います。(今回もプライベートなことを書きすぎていないか少し不安。問題があれば消す。)